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オオクワガタはなぜ絶滅危惧種?いつから指定?激減する個体数とヤフオク禁止という対策

オオクワガタはなぜ絶滅危惧種に?「住処の消滅」と「ヤフオク禁止」が語る残酷な現実

かつて「黒いダイヤ」と呼ばれ、少年たちの憧れであり、大人たちの一攫千金の夢でもあったオオクワガタ。

しかし今、オオクワガタは環境省のレッドリストで「絶滅危惧II類」に指定され、いつ姿を消してもおかしくない状況に追い込まれています。

「昔は近所の山にもいたのに、なぜ?」 「ヤフオクで売れなくなったって本当?」 「捕まえたら逮捕されるの?」

通勤電車の中でふとそんな疑問を持ったあなたへ。この記事では、オオクワガタが絶滅の危機に瀕している「生物学的な理由」と、ヤフオク禁止に至った「経済的な背景」を包み隠さず解説します。

よーかん

これを読めば、単なる昆虫の話ではなく、私たち人間の活動がどのように自然界を変えてしまったのか、そのリアルな現在地が見えてくるはずです。

この記事を読むと、以下の5つのことが明確に分かります。

  • 絶滅危惧種になった「真犯人」は乱獲ではなく「住処の消滅」と「材割り」である理由
  • いつから指定されていたのか?1990年代から続く30年間の「警告」の歴史
  • 野生個体数は幻レベル?飼育数との異常な乖離と「出会える確率」の現実
  • 「ヤフオク禁止」が市場に与えた衝撃と、それが最強の「対策」である背景
  • 「逃がす=善」は大間違い。私たちが守るべき「飼育の責任」と「見守るマナー」

この記事を書いた人

よーかん

当サイトは、子どもの頃にクワガタに憧れていた筆者が、クワガタの種類・特徴や飼育方法などを中心に、初心者や親子でも楽しめる内容をお届け。本業ではケアマネジャーという相談業務に長年携わっており、人に伝えること・正確な情報を調べることが得意です。
クワガタ好きな子供やファンの方に記事がお役に立てば嬉しいです!

目次

オオクワガタを追い詰めた「2つの破壊」と「里山の消滅」

オオクワガタを追い詰めた「2つの破壊」と「里山の消滅」
  • 里山文化の崩壊と「台場クヌギ」の消失
  • 根こそぎ奪う「材割り採集」の罪
  • 乱獲だけではない「乾燥化」という敵
  • わずかに残された生息域の現状

理想のマイホーム「台場クヌギ」はもう存在しない

オオクワガタが減少した最大の要因は、実は「乱獲」よりも前に、彼らが住む家そのものが日本から消えてしまったことにあります。オオクワガタはどんな森でも生きていけるわけではありません。彼らが最も好むのは、人の手によって管理された「里山」、特に「台場クヌギ」と呼ばれる特殊な古木です。

かつて日本人は、炭や薪を作るためにクヌギの木を定期的に高い位置で伐採していました。切られた場所から新しい枝が伸び、それをまた切る。これを繰り返すことで、幹が太く、独特のコブ状になった「台場クヌギ」が出来上がります。この古木には、オオクワガタが身を隠し、産卵するための絶好の「洞(うろ)」が自然と形成されていました。

しかし、昭和30年代以降の燃料革命でガスや電気が普及すると、炭焼きは行われなくなりました。放置されたクヌギはボロボロに朽ち果てるか、宅地造成やゴルフ場開発のために伐採されていきました。

オオクワガタにとっての「高級タワーマンション」であった台場クヌギは、現代の日本においては維持管理されなくなり、物理的に消滅してしまったのです。

よーかん

住処を失った彼らは、数を減らさざるを得ませんでした。

「材割り採集」という破壊行為がトドメを刺した

住処が減る中で、追い打ちをかけたのが人間の欲望による「破壊的な採集」です。夏の夜に樹液に来る成虫を捕まえるだけなら、まだダメージは限定的でした。しかし、ブームが過熱すると、冬の間に幼虫を捕獲する「材割り(ざいわり)採集」が横行するようになりました。

これは、オオクワガタの幼虫が潜んでいる朽ち木を、斧や鉈(なた)で叩き割って幼虫を取り出す手法です。プロや一部のマニアは、幼虫がいそうな部分だけを慎重に削ることもありますが、多くの心ない採集者は、産卵木となり得る貴重な朽ち木を粉々に破壊していきました。

オオクワガタが産卵できる状態の良い朽ち木は、森の中にそう何本もあるわけではありません。一度破壊された木は、二度と元には戻りません。「今いる幼虫」を捕るために、「来年以降の産卵場所」を根こそぎ奪う。

この「焼き畑農業」のような採集スタイルが全国で繰り返された結果、繁殖のサイクルそのものが断たれてしまったのです。

よーかん

これは採集というよりは、環境破壊そのものでした。

森の乾燥化が幼虫の生存率を下げている

あまり語られませんが、森の環境変化も深刻です。里山が放置されると、ササや竹が侵食したり、鬱蒼としすぎて日光が入らなくなったりします。一見、自然豊かに見えるかもしれませんが、風通しが悪くなったり、逆に保水力が落ちて乾燥したりと、微妙なバランスが崩れます。

オオクワガタの幼虫は、適度な湿り気を帯びた菌糸の回った朽ち木を好みます。しかし、森が乾燥化すると、朽ち木がカピカピに乾いてしまい、幼虫が育たなくなります。また、温暖化の影響で、彼らが好む涼しい環境が減っているという指摘もあります。

かつての名産地でも、「昔はこの木に必ずいたが、今は木が乾いてしまって何もいない」という話をよく耳にします。

よーかん

人間が直接手を下さなくても、人間が森から離れたことによる環境変化が、静かに彼らの首を絞めているのです。

それでも生き残る「奇跡の個体」たち

絶望的な状況ですが、完全に絶滅したわけではありません。九州の山奥や、東北地方の一部、そして大阪近郊の有名な産地(能勢など)では、地元の愛好家たちの懸命な保護活動や、わずかに残された環境の中で、細々と命をつないでいます。

しかし、その個体数は風前の灯火です。「一晩で数匹捕れた」というのは遠い過去の話。現在は、プロの採集家がシーズンを通して山に入り浸っても、野生のオオクワガタ(特に大歯型と呼ばれる大型個体)に出会えるのは数年に一度あるかないか、というレベルの希少種になっています。

よーかん

2025年の今、野生のオオクワガタに出会うことは、天然記念物に遭遇するのと同等の奇跡と言っても過言ではありません。

オオクワガタはいつから「絶滅危惧種」なのか?30年の指定履歴

オオクワガタはいつから「絶滅危惧種」なのか?30年の指定履歴
  • 1991年、すでに「危急種」として警告されていた
  • 1998年の改訂で「絶滅危惧II類」へ深刻化
  • ブームの裏で静かに進行していた「指定」の歴史
  • なぜ30年も状況は改善しなかったのか

警告は30年以上前から鳴っていた

「最近急に減った」と思っている人が多いかもしれませんが、実はオオクワガタに対する警告は、昭和の終わりから平成の始まりにかけてすでに発せられていました。

環境省(当時は環境庁)が1991年に発表した日本初のレッドデータブックにおいて、オオクワガタはすでに「危急種(Vulnerable)」に指定されています。これは現在のカテゴリーで言うところの「絶滅危惧II類」に相当します。

つまり、1990年代後半のあの熱狂的なオオクワガタ・ブームの最中も、彼らは公的には「絶滅の危機にある生き物」だったのです。

よーかん

皮肉なことに、私たちは絶滅危惧種を追いかけ回し、それを「黒いダイヤ」と呼んで消費していたことになります。

1998年、カテゴリーがより明確化

その後、調査が進むにつれて分類が見直され、1998年の改訂版レッドリストからは正式に「絶滅危惧II類(VU)」という名称になりました。これは「絶滅の危険が増大している種」を指します。

以降、2007年、2012年、そして2020年の見直しにおいても、オオクワガタはこのカテゴリーに留まり続けています。「ランクが上がっていないから大丈夫」ではありません。「30年以上もの間、保護策が功を奏しておらず、回復の兆しが全くない」というのが正しい解釈です。

よーかん

通常、適切な保護が行われればランクは下がるはずですが、オオクワガタの場合は生息地の減少が止まらないため、横ばいの状態が続いています。

なぜ「手遅れ」になるまで放置されたか

指定から30年以上経っても状況が改善しない理由は、やはり「里山」という人間の生活圏と密接しすぎている点にあります。

イリオモテヤマネコのような、人の手が及ばない原生林の動物であれば、エリアごと立ち入り禁止にするなどの強力な保護策が打ち出せます。しかし、オオクワガタがいるのは私有地の雑木林や、開発対象になりやすい平地の森林です。「虫を守るために土地開発を中止せよ」という主張は、経済活動の前ではなかなか通りません。

よーかん

法的拘束力のないレッドリストへの掲載だけでは、ブルドーザーを止めることはできなかったのです。

「指定」されても止まらなかった乱獲

また、1990年代から2000年代にかけては、レッドリストへの掲載が逆に「希少価値」を煽る結果になってしまいました。「絶滅危惧種だからこそ欲しい」「いなくなる前に確保したい」というコレクター心理を刺激し、商業的な乱獲に拍車をかけました。

環境省が警鐘を鳴らし続けていたにもかかわらず、私たちはその声を「レア度のアピール」としてしか受け取らなかった。

よーかん

この30年間の歴史は、私たちの環境意識の低さを映し出す鏡のようなものです。

野生の個体数は何匹?飼育数は数百万でも「野生は幻」の怪

野生の個体数は何匹?飼育数は数百万でも「野生は幻」の怪
  • 正確な「国勢調査」は存在しない
  • 「一晩に10匹」から「1シーズン0匹」への激減
  • 飼育下には数百万匹?歪なピラミッド構造
  • 遭遇確率は「ツキノワグマ」より低い現実

昆虫の数を数えることの難しさ

「日本にあと何匹残っているのか?」という質問に対する正確な答えは、専門家でも持ち合わせていません。大型哺乳類と違い、土の中や木の洞に隠れている昆虫の全頭調査は物理的に不可能だからです。

しかし、生息地の面積と、単位面積あたりの生息密度から推計することは可能です。そしてその数値は、絶望的なカーブを描いて右肩下がりを続けています。

よーかん

かつての名産地であった山梨県や福島県の一部地域において、環境省や研究者が定点調査を行っていますが、確認数は激減しています。

体感値としての「絶滅」

数字以上にリアルなのが、長年フィールドに通い続けている採集者たちの「体感値」です。 1980年代には、条件の良い夜なら一晩で数匹のオオクワガタを見つけることは難しくありませんでした。しかし2025年の今、同じ場所で同じように探しても、1シーズン(夏の間毎日通って)で1匹見つかるかどうか、というのが現実です。

プロの採集ガイドですら、「必ず見せます」とは口が裂けても言えなくなりました。地域によっては、すでに「地域絶滅(その場所から完全にいなくなること)」したと判断されている場所も少なくありません。

よーかん

データ上の絶滅の前に、フィールドではすでに「出会えない生き物」になっているのです。

ボトルの中だけの繁栄

一方で、奇妙な現象が起きています。野生では幻なのに、日本国内にはおそらく「数百万匹」単位のオオクワガタが存在しています。それは、ブリーダーの飼育部屋やショップの棚に並ぶ「菌糸ビン」の中の個体です。

累代飼育(ブリーディング)の技術が確立されたことで、オオクワガタは「飼えば簡単に増える虫」になりました。野生個体群は消滅寸前なのに、ペットとしての個体数は爆発的に増えている。この「野生の不在」と「飼育下の過密」という極端な不均衡が、オオクワガタ問題の最大の特徴です。

よーかん

生物種としては存続していても、野生動物としては死に体に近い状態なのです。

野生個体との遭遇確率

具体的にどれくらいレアなのか、イメージしやすく例えましょう。 もしあなたが今から何の事前情報もなく、適当なクヌギ林に入ってオオクワガタの成虫を見つける確率は、山でツキノワグマに遭遇する確率よりも遥かに低いでしょう。

コクワガタやノコギリクワガタなら、1本の木に数匹ついていることも珍しくありません。しかしオオクワガタは、何千本という木を見て回って、ようやく「あそこにいるかもしれない」という洞が見つかるレベルです。

よーかん

もはや彼らは、身近な昆虫ではなく、運と執念を持った者だけが拝める「神獣」のような存在になってしまったのです。

国や自治体の対策は?「保護」と「放虫」の危険なジレンマ

国や自治体の対策は?「保護」と「放虫」の危険なジレンマ
  • 環境省が進める「生息地保護」へのシフト
  • 先進的な自治体(佐賀・大阪)の取り組み事例
  • 勘違いされがちな「放流」は対策ではない
  • ヤフオク禁止も民間による立派な「対策」

「個体」を守るのではなく「場所」を守る

絶滅危惧種対策として最も重要なのは、「捕まえないこと」以上に「住む場所を残すこと」です。環境省や一部の自治体は今、残された貴重な生息地を「保護区」として指定し、立ち入りを制限したり、開発を規制したりする動きを見せています。

例えば、クヌギやコナラの林を公園として整備するのではなく、あえて「人の手を入れつつ管理する里山」として保全するプロジェクトが進んでいます。

よーかん

ボロボロになった台場クヌギを補強したり、新たなクヌギを植樹して数十年後の住処を作ったりといった、気の遠くなるような活動が地道に行われています。

自治体レベルでの独自規制

国レベルの法律(種の保存法)では規制されていなくても、自治体が条例で採取を禁止しているケースがあります。 例えば、佐賀県の一部の町や、大阪府の能勢町周辺など、オオクワガタの有名な生息地を持つ自治体では、地域独自の保護条例を設けたり、保護団体と協力してパトロールを行ったりしています。

これらの地域では、網やライトを持って歩いているだけで職務質問されることもあります。「法律で決まってないからいいだろう」という理屈は、地元の方々の熱心な保護活動の前では通用しません。

よーかん

地域ぐるみで「オオクワガタという財産」を守ろうとする動きは、2025年現在、確実に広がっています。

誤った対策:「放虫」という名の破壊

対策について語る時、絶対に避けて通れないのが「放虫(ほうちゅう)」の問題です。「減っているなら、増やして森に返せばいいじゃないか」と考える人がいますが、これは現代の保全生態学においては「やってはいけない最悪の対策」とされています。

前のセクションでも触れましたが、飼育下で増えた個体は、野生の厳しい環境で育った個体とは遺伝的な強さが違ったり、別の産地の血が混ざっていたりします。これらを放つことは、元々そこにいた純粋な野生個体の遺伝子を汚染し、病気を持ち込むリスクを高めます。

魚の放流事業とはわけが違います。「森を豊かにしたい」という善意で行った放虫が、結果としてその森のオオクワガタを「遺伝子レベルで絶滅させる」ことになるのです。

よーかん

本当の対策とは、人間が余計なことをせず、環境だけを整えて、彼らの自然回復力を信じて待つことだけなのです。

民間企業の対策:「プラットフォームの封鎖」

行政だけでなく、民間企業の動きも大きな「対策」の一つです。記事のメインテーマでもある「ヤフオク!」や「メルカリ」などのプラットフォームによる出品禁止措置は、流通経路を断つという意味で、極めて強力な保護対策として機能しています。

「金になるから捕る・増やす」という動機を断ち切ることは、警察がパトロールする以上に効果があります。

よーかん

経済的なインセンティブを消滅させることこそが、資本主義社会における最も有効な絶滅危惧種対策だったと言えるかもしれません。

ヤフオク禁止と「黒いダイヤ」の終焉が生んだ今の市場

ヤフオク禁止と「黒いダイヤ」の終焉が生んだ今の市場
  • 2022年「ヤフオクショック」の全貌
  • なぜ環境省は規制に動いたのか
  • 現在の入手ルートと「裏取引」のリスク
  • 価格暴落と「本物の価値」の二極化

2022年9月、市場は凍りついた

オオクワガタ業界にとって、2025年現在でも語り継がれる最大の転換点は、2022年9月の「ヤフオク!(現Yahoo!オークション)」による出品禁止措置です。それまで、ヤフオクはオオクワガタ取引の最大プラットフォームでした。ブリーダーが自慢の個体を売り、初心者がそれを買う。年間数億円規模の市場がそこにはありました。

しかし、ヤフオクは環境省の要請を受け、オオクワガタを含む「絶滅危惧種」に指定されている動植物の個体間取引を一斉に禁止しました。これは法律による禁止(種の保存法)ではなく、プラットフォーム側の自主規制ですが、事実上の「市場閉鎖」でした。

これにより、「副業でオオクワガタを増やして売る」というビジネスモデルは崩壊しました。手軽に換金できる場所を失ったことで、多くのにわかブリーダーが撤退し、ブームは急速に冷え込みました。

よーかん

通勤中のサラリーマンが夢見た「週末ブリーダーで小遣い稼ぎ」は、この時をもって終焉を迎えたのです。

規制の引き金は「放虫」と「遺伝子汚染」

なぜここまで厳しい措置が取られたのでしょうか。単に数が減ったからではありません。最大の理由は、売買が盛んになりすぎたことによる「遺伝子汚染」の拡大です。

ネットで購入したオオクワガタを、「自然に還してあげよう」という善意で、あるいは「飼いきれなくなったから」という身勝手な理由で、近所の山に放す人が後を絶ちませんでした。

オオクワガタは地域ごとに独自の遺伝子を持っています。東北のオオクワガタと九州のオオクワガタが交雑すると、何万年もかけて築かれた地域の固有性が失われてしまいます。

さらに悪いことに、体長を大きくするために海外の近縁種(グランディスオオクワガタなど)とかけ合わせた「雑種」が、純血種として流通し、それが野外に放たれるケースもありました。これは生態系へのテロ行為です。

よーかん

環境省は、こうした安易な流通が生態系を破壊すると判断し、プラットフォーム側への働きかけを強めたのです。

現在の入手ルートは「専門店」か「SNSの闇」

では2025年現在、オオクワガタはどこで手に入るのでしょうか。ヤフオクから締め出された後、市場は大きく二つに分かれました。

一つは、信頼できる「昆虫専門店」やその自社ECサイトです。ここでは、血統管理が徹底された個体が、適正な価格で販売されています。彼らは「絶対に野外に放さない」ことを啓蒙しながら販売しており、真の愛好家はここに集まっています。

もう一つは、X(旧Twitter)やInstagramなどのSNSを通じた「個人間取引(DM取引)」です。ハッシュタグ検索をすれば、販売ポストが見つかります。しかし、ここは無法地帯になりがちです。

「入金したのに届かない」「死着保証がない」「血統が偽物だった」といったトラブルが多発しています。プラットフォームの保護がないため、全ては自己責任。

よーかん

かつてのヤフオクのような手軽さと安全性は、もうどこにもありません。

バブル崩壊後の「本物」の価値

ヤフオク禁止により、供給過多だった「普通のオオクワガタ」の価格は暴落しました。数千円で売れていた個体が、今では引き取り手がいません。一方で、88mm、90mmを超えるような「超大型血統」や、産地が明確で累代が確かな「極太血統」の価値は、逆に高騰しています。

「誰でも増やせば売れる」時代は終わり、「本物を作り出せる職人」だけが生き残る時代になりました。これはある意味で、健全化と言えるかもしれません。金儲け目的の層が去り、本当にオオクワガタを愛する人たちだけが残ったからです。

よーかん

もしあなたが今から飼育を始めたいなら、リセールバリューなど考えず、純粋にその造形美を楽しむ覚悟が必要です。

オオクワガタは「違法」ではないが「モラル」が問われる時代

オオクワガタは「違法」ではないが「モラル」が問われる時代
  • 「種の保存法」とオオクワガタの微妙な関係
  • 捕まえても逮捕はされない、けれど…
  • 私たちができる最強の保護活動とは
  • 「見守る」という新しい楽しみ方

法律上は「シロ」、しかし社会的制裁は「クロ」

ここで冒頭の疑問に答えましょう。「オオクワガタを捕まえたら逮捕されるのか?」 答えは「No」です。2025年12月現在、オオクワガタは環境省のレッドリスト(絶滅危惧II類)には入っていますが、「種の保存法」に基づく「国内希少野生動植物種」には指定されていません。

したがって、タガメやマルバネクワガタのように、捕獲や譲渡が法律で禁止されているわけではありません。国立公園の特別保護地区などを除けば、法的には採集も飼育も可能です。

しかし、法的にシロだからといって、大手を振って採集できる雰囲気ではありません。SNSで「野生のオオクワガタ採った!」とアップすれば、称賛よりも「そっとしておいてやれ」「場所を晒すな」という批判のリプライが飛んでくる可能性もあるでしょう。

よーかん

法律よりも厳しい「世間の目」という社会的制裁が、現在の抑止力になっています。

なぜ「指定」されないのか?

これほど減っているのに、なぜ法的規制(指定)がかからないのでしょうか。一つの説として、すでに飼育個体が大量に普及しすぎており、規制をかけると混乱が生じるからだと言われています。

何万、何十万匹という飼育個体が一般家庭にいる状態で、「明日から譲渡禁止」とすると、飼育放棄や密売の地下化など、逆効果になる恐れがあるからです。

だからこそ、私たちの「モラル」が試されています。

よーかん

法律で禁止されていないからこそ、一人ひとりの良識に委ねられているのです。

「採らない」という選択肢

かつての昆虫採集は「捕まえて標本にする」あるいは「家で飼う」ことがゴールでした。しかし、これからの時代のオオクワガタとの付き合い方は変わらなければなりません。

最強の保護活動は、「見つけても捕まえないこと」です。 もし、運良く山でオオクワガタを見つけたら、スマホで写真を撮るだけにしてください。そして、その場所は誰にも教えないでください。SNSにアップする際も、背景をぼかし、位置情報は絶対に消してください。

「そこにいる」という事実だけで満足する。その個体が来年もそこで生き、子孫を残してくれることを祈って、静かに立ち去る。

よーかん

それが、2025年の大人に求められる、最もクールな昆虫採集のスタイルです。

飼育するなら「墓場まで持っていく」覚悟で

もし、ショップで購入して飼育をするなら、一つだけ絶対に守ってほしい約束があります。それは「絶対に野外に放さないこと」です。

死ぬまで面倒を見るのが飼い主の責任です。増えすぎて飼えないなら、責任を持って処分する(殺処分する)ことも、残酷なようですが、生態系を守るための愛情です。

よーかん

「かわいそうだから森に逃がす」ことこそが、野生のオオクワガタを絶滅に追いやる最も残酷な行為であることを、肝に銘じてください。

まとめ:憧れは「所有」から「共存」へ

かつて「黒いダイヤ」として欲望の対象だったオオクワガタは、今、静かにその数を減らしながら、日本の森の奥深くに潜んでいます。

この記事で見てきたように、彼らが絶滅危惧種になったのは、単に子供たちが捕りすぎたからではありません。私たちが炭焼きをやめて「里山」という住処を奪ったこと、商業目的の「材割り採集」で産卵場所である朽ち木を粉砕したこと、そして警告が出ていたにもかかわらず「ヤフオク」での売買に熱狂し続けたこと。

これら全ての要因が重なった結果、30年以上かけてゆっくりと、しかし確実に追い詰められてきたのです。

「いつから危なかったのか」を知れば、私たちの対応がいかに後手後手だったかが分かります。そして「個体数」の激減ぶりを知れば、もはや気軽に捕まえていい生き物ではないことも痛感するはずです。

2022年のヤフオク取引禁止は、一つの時代の終わりを告げました。もう、オオクワガタで一攫千金を夢見ることはできません。しかし、それは彼らにとっては、商品としてのレッテルを剥がされ、静かな森の住人に戻れるチャンスでもあります。

皮肉なことに、経済的な価値がゼロになった今こそ、彼らの生物としての「命の価値」はかつてないほど高まっています。

これからの時代、オオクワガタとの関わり方は「所有」から「共存」へとシフトしなければなりません。

もしあなたが、ブリーダーとして飼育を続けるなら、その血統を絶やさないこと、そして絶対に野外へ放さないことが最大の責任です。 もしあなたが、かつての昆虫少年として森に入るなら、網ではなくカメラを持つことが新しいマナーです。

野生のオオクワガタは、もう「捕まえて自慢するトロフィー」ではありません。ツキノワグマやカモシカと同じように、運良く出会えたらその奇跡に感謝し、遠くから畏敬の念を持って見つめる。そんな「森の神様」のような存在になりつつあります。

あなたがもし、通勤電車の窓から見える山並みに想いを馳せるとき、そこにかつての王様がひっそりと、しかし力強く息づいていることを想像してみてください。

よーかん

そして、もし奇跡的に森で彼らを見つけることがあっても、その場所は誰にも教えず、あなたの胸の中だけの秘密にしてください。

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